不機嫌な果実

『送信』のクリックを押すと、麻紀は珍しく小菅のことを考えていた。


見た目は一見チャラチャラしていそうで、なかなかのしっかり者。


今回の社員旅行にしたって、出向してきたばかりのあいつが無理に幹事を引き受けなくても他にも人材はいたはず。


断ることもできただろうに。

それなのに――。


嫌がらずに引き受けた上に、おまけに周りのことをよく考えている。


意外だった。


もっと、ハチャメチャでいい加減な男かと思っていたから。


コネ入社のアホボン(アホなボンボン＝金持ち息子)ぐらいにしか、正直思っていなかったから。


案外、いい奴なのかもしれない。