不機嫌な果実
午後6時といっても、外はまだ明るい。
陽が傾き、風も出てきたおかげで、だいぶ暑さが凌げるようになった。
それでも湿度が高いのか、駅までの道のりを歩くだけで少しばかり肌が汗ばんだ。
「渡辺さん、お腹は空いてます?」
「うん。まあまあかな?
今日は遅めのランチだったから」
実際、お腹はあまり空いていなかった。
旅行代理店に行った帰りに遅いランチを取ったものだから時計の針は1時を回っていた。
会社に戻ると、休憩時間の1時間をとうに越えており、慌てたのだ。
「じゃあ、軽く飲みましょうか?料理が美味くて、お薦めの店があるんですよ。そこでいいですか?」
「いいわよ。話ができて、食事ができるなら私はどこでも」