不機嫌な果実


言い放ったあと、しまった、と麻紀は心の中で思った。


あまりにも素っ気ない態度が、かえって小菅を意識しているからのようにさえ感じたからだ。


でも一方で、意識するような相手ではない、と自分に言い聞かせている。


この何ともいえないモヤモヤとした感情を胸に抱きながら小菅についていくと、賑やかな駅前にやってきた。


ここは居酒屋やバーが犇めくエリアだ。


「ここです」


見上げると、ひときわ賑やかなビルの前に来ていた。


1階から7階まで飲食店のフロアがある茶色いビル。


そのエレベーター付近には、カップルやサラリーマンらしき三人組がエレベーター待ちをしていた。


「僕たちもあれに乗りましょう」


慌てて乗り込んだ麻紀のすぐ後ろに小菅が立ち、長い手で7階のボタンを押した。



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