不機嫌な果実
「えぇ。俺とよく似た顔の姉貴が一人います。でも、もうじき結婚しますけど」
――えっ?結婚!?
声に出しそうになり、慌ててミネラルウォーターに手を伸ばした。
そっか。やっぱり柏木さんの相手は小菅のお姉さんなんだ……。
なんとなく、そんな気はしてたのよね。
たった二回しか会ったこともないし、会話だってほとんどない人だったけれど、彼の放つミステリアスな雰囲気が気になっていたのは事実。
でも、それももう何ヵ月も前のような気がする。
「あれ?どうかしました?なんか難しい顔してますよ」
「えっ、あたし?なんでもないわよ。
それよりお姉さん、素敵な人と巡り合えたのね。おめでとう!ちなみに、いくつなの?」
「姉貴ですか?渡辺さんと同い年ですよ」
「――あっ、そう」
次第に、声のトーンが下がっていく。