不機嫌な果実
同い年と聞いて、重い鉛のようなものがズシンッと麻紀の胸の中に落とされた。
――そうよね。適齢期だもんね。誰だって、結婚を意識するわよね。
「あのー、さっきから何をブツブツ言ってるんですか?適齢期がどうのこうのとか……」
「――えっ?まさか、今の聞こえてたの?」
「はい。はっきりとは聞こえませんでしたけど。
やっぱり、渡辺さんでも適齢期とか気にするんですか?」
「ちょっと、それ、どういう意味?」
「いや、渡辺さんはあんまり結婚願望がないのかな、って思ってたので。仕事と恋愛は割り切るタイプのように感じてましたから」
「……」
そう。確かに、仕事と恋愛は割り切るタイプだった。
相澤と付き合っている間は――。
でも、その恋にも終わりが告げられたとき、自分の居場所みたいなものが感じられなくなって、心だけがどこか遠くに置き去りにされてきた。
あたしの存在価値って、なんだろう?って。
それが、この数ヶ月の出来事だ。