不機嫌な果実
小菅は私のことを貶しているの?それとも、褒めているの?
昼間感じたモヤモヤと同じようなよく分からないような感覚が、麻紀に再び襲い掛かった。
「あっ、ちなみに姉貴の結婚相手ですけど、」
「あぁ。もうわかってるからいいわよ。とてもお似合いな二人だと思うわ」
「お似合いな二人って、会ったことありましたっけ?」
「会ったじゃない。この前、あのバーで」
「――えっ?あのバーって、もしかして祐輔さんのことですか?」
「そうよ。小菅くんのお姉さんにはお会いしたことないけど、きっとお似合いの二人だと思うわ。女の勘だけど」
小菅は黙って、視線をグラスに落としたままだった。
「――あの、渡辺さんは、祐輔さんが結婚すると聞いて落ち込んだんですか?」
「えっ、そんなことはないわよ」