つきのうさぎ
彼は何も答えません。
『私を無視するとはねぇ。親の教育がなってないわ』
『うるさいな!』
『あらあら話せるのかい?てっきり話せないのかと思ったわ。それで?どうかしたのかい?』
彼は怒って歩きだしました。なぜか彼女は鈴の音に導かれる様に後を追いました。
『どうして泣いてたんだい?』
『ついてくるなよ!』
『それじゃ話しな!』
『やだよ!』
『それじゃ私もやだね』
二匹は追いかけっこをする様に夜の森を進んだ。
『どこに向かってんだい』
『…つき』
彼女は枝に止まった。
『つきって空の月かい?なんであんなとこに行きたいんだい?』
彼は急に立ち止まった。
『どうして笑わないの?』
『どうして笑うんだい?』
『別に…』
彼はまた歩きだした。
『月を見て泣くなんて何か理由があるんだろうに…』
『……母さんも父さんも月にいるんだ…』
彼は鈴を鳴らしながら話し始めた。
『母さんが言ってたんだ。死んだら星になって、輝きながら見守るって…』
『死んだのかい…』
『父さんは病気だったんだ…母さんは嵐で…』
『そうかい………悪い事きいたね…だけど、どうしてずっと池にきてたんだい?それにどうして月なんだい?』
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