この空の下
暫くして、奈々は「橘」と書かれた表札の前で止まった。

ピーンポーン・・・

「奈々でしょ!?入って入って」

インターホンの向こうから、元気なおばさんの声が聞こえてきた。

これが、優のお母さん。

優の家も、お父さんが2年前に他界していた。

「お邪魔します」

奈々は、玄関に入ってからお辞儀をして、ブーツを脱いだ。

「いらっしゃい!お風呂入る!?どうする?」

優の家に足を踏み入れた途端、元気な優のお母さんが言う。

ガチャッッ・・・

ドアが開く音がした。

「母ちゃん、そんなにしゃしゃらなくていいから」

優だ。

優は、灰色のスエットを着て登場して来た。

「はいはい、まあ奈々はゆっくりして行ってね!」

優のお母さんは、笑いながらキッチンに入っていった。

「ごめん五月蝿い母ちゃんで」

優が口を開いた。

「ううん、こっちこそいきなりごめん」

奈々は少し俯いたまま謝った。

「いつものことじゃん?」

優は笑いながら答えてくれた。
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