美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 (私達しか見えないんだ…!)
 携帯電話を弄る高校生。
 汗を拭いているサラリーマン。
 世間話に花咲す主婦達…。

 …そうです。
 ユイ達のように、EPD能力の片鱗ある者しか、現代人には“竜”の姿が見えないのです。

 〔カーン、カーン、カーン!〕
 いよいよ遮断機が下がり始めました。


 と、軽自動車がスピードを上げて線路に侵入します…!
 もちろんそこには雷竜が…!!


 雨上がりの夕暮れ。眠気を伴ううららかな午後と違い、あるいは一番、悲劇が似合わない時間帯かもしれません。

 皆、これから始まる日々の
休息時間を前にし、銘々が思いを巡らす段でした。


 そんな中、ユイと美幸さんだけが緊迫に息を呑みます…!


 (ぶつかる!!)


……っ!

〔ガシャーァァンン!〕
 激突の音が周囲の視線を一斉に踏切内へと向けさせました!

 しかし彼等が見たのは、ただ無為に横転している一台の軽自動車です…!


 「……!!」

 人は本当に驚いたとき映画やドラマのように「何が起きた!?」とは言いません。

 ただ絶句するだけなのです!

…………

 一瞬、奇妙な沈黙が周囲を包みました。

 大人達が愚鈍にも石化する中、ユイだけが駆け出すのでした!
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