美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ！

　【１０年ぶりだ…ユイ…】
　“赤き体を持つ何か”は言いました。
　【俺はお前を知っている…お前は俺を知っている…】


　………それはあたかも証明でした。

　“人の感情は未来を変える力”である事の証明のように、電車と横転した車の衝突は回避されたのでした。

　〔ギィィィ……〕
　ようやく電車が停止したのは８両が通過した後でした。

　…………
　………
　まるで墓地のような沈黙を破り、
　「や、やったぞ！！」
　と、中年のサラリーマンが叫ぶと、それに続いて拍手と歓声が巻き起こりました。


「奇跡だわ！」

　奇跡……。

　確かにその衝突は、ニュートン力学的にいえば絶対に不可避な運命だったハズです…。
　そう、力ではありません。
　少女の強い“想い（感情）”が未来を書き換えたのです。
　
　しかし驚いてはいけません。
　それが“竜”という様態をしていた事以外は、我々にも出来る、また誰にでも備わった“人としての力”なのですから。

　
　たとえばベートーベンに歓喜の歌を創らせたのも、
　ヒトラーに２００万人の殺人をさせたのも、
　そこには感情の作用こそが根底であったに違いないのでから。