美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 ……………
 ………… 
 〔ピーポー、ピーポー〕
 救急車に乗っているといささか奇妙な気持ちになります。

 サイレンはいつまで経っても同じ音階で、まるでいつまでも真実に辿り着けない永久命題のようでした。

 (確かに…。確かに“一本道だった今までの日常”はまるで迷路になったみたいに今日を境に突然、変わってしまったケド…)

 ストレッチャーに横たわるユイの手を握りながら、
 (けど、だけど…!)
 と、美幸さんは強く思い直しました。
 (逃げるワケにはいかない!)


 彼女は力強く炎竜の言葉を反駁しました。

 【『ハデスの后』を追え…。 そして、『指輪』を追え…】と、炎竜は言っていました。


 「『ハデスの后』…そして『指輪』……」
 音を確かめるように美幸さんは呟くのでした。


 「え? 何か?」
 彼女の独り言に救命士が訊き返しました。


 「あ、いえ…。“ほころび”が気になって…」
 美幸さんは笑顔を作りました。
 「服の袖にホラ、“昨日まで気付かなかった綻び(ほころび)”が……」

 “昨日まで気付かなかった、綻びが”
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