美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 その2年前…今から数えれば10年前。
 
 美奈子が14歳のときに父親がいないという以外は平凡な彼女の毎日に“彼”は突然現れたのです。

 季節は雪がちらつくような真冬の事でした。

 ………
 美奈子が夕暮れの校門をくぐると、そこには一台の黒塗りのクラウンが不自然に停車していました。
 
 「なんか、変…」
 不自然な印象はありました。
 しかしそれが、まさか自分を待っていようとは、予想だにしませんでした。
 
 彼女が足早に去ろうとするところ、そのクラウンはパワーウィンドウを降ろし、窓越しに、ある男の声を投げかけます。
 「深津美奈子さん?」、と。

 後になって分かる事ですが、“彼”は、初めて会う美奈子に格好をつけようとして、課内で一番の高級車を転がし、サングラスをかけていたワケですが、そんな男の見栄に女子中学生が気付くハズもなく…
 美奈子は怖くなって俯いて一層歩みを早めるのでした。

 
 「あ、待って!怪しい者じゃない!」
 彼は慌てて車を降ります。
 ジェームズ・ボンドを気取ったつもりが、よもや中学生にすらフラれてしまうとは、と慌てて……

 「僕は藤間裕!」
 “彼”改め、裕は後ろから駆け寄って、美奈子の手を取りました。
 「キミを守りに来た!」
 
 この時、藤間裕は24歳。
 
 その高潔な、でもちょっぴり子供っぽい声に一瞬にして警戒心は瓦解し、彼女は恋の予感すら覚えたのです。
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