美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 藤間裕という男性と一緒にいた日々は、確かに私の青春そのもの…

 美奈子は思います。

 しかし…
 しかし、それは、思い出でなくてはならないのよ…


 彼女の、唯一容姿面で自信を持っている、自慢のロング・ヘアは夜風にて豊かに膨らんでいました。
 
 ………
 取り違えてはならない…


 甘い記憶に惑わされてそれを現在(いま)に持ち出すことはお互いを不幸にするだけ…

 彼には妻子があり、守るべき家庭がある…

 彼との青春の思い出は、叶わなかった切ない慕情として私の胸に秘めておく
べきなんだ…

 そうでなければ、それはたちまち、醜い単なる固執になってしまう…


 …………
 ………
 やれやれ…私は何を考えているのかしら…
 
 バカみたい…
 いえ……

 「ほんと、バカみたい!」
 美奈子はバッと立ち上がり、コーヒーを飲み干します。
 「子供みたい!私。 ほんと、子ッ供ぉ~!」
 彼女は大声で言いました。

 そしてピッチングの要領で、缶コーヒーをゴミ箱へ投げました。
 
 人生で初めての、フルパワーのストレート…。
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