美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 この場にユイがいれば……と、少年の最期を知る、物語に関わった全ての人々は後悔をする事でしょう。

 ユイがそんな下らないテレビなどを見ているとき、竜一は苦闘を続けていたのです。


 「ユイちゃんに言ったあの台詞!」
 と、美奈子が竜一の背中に叫ぶと、彼は一瞬、石のように固まりました。


 彼は、そのとき、ユイに言ったのでした。

――だから。だからさ。
――僕の、この世界での、刹那の、一生の、唯一の、悔いとなるかもしれない…。
――君に出会ったことが

――世界中のみんな、君のようならいいのにね……


 「……」
 竜一は無言の背中で美奈子の次の言葉を待ちました。


 「あのとき、あなたが言ったセリフ、あれ『帰りたい。他人を愛したい』って意味だったののよ」
 美奈子もまた人ごみを押しのけ竜一を追います。


 「ちがう!」


 「ちがくない!」
 美奈子は竜一を後ろから抱きしめました。
 「行かないで! 頭でばかり考えないで! 達也くんと同じよ、助けてあげるわ!」

 「優しさは嬉しかった。…でもあくまで邪魔をするなら…」
 竜一は振り向きはしません。美奈子の温もりは、もはや自分の決意を試す誘惑にしか思えないのです。

 「……邪魔をするわよ! 子供が悪い事をするなら、どんな目にあっても!」
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