美少女戦士
イグニス・ドラグーン・ユイ!
――――…
巻き起こる雷光、空気を裂く衝撃波、半壊するビル群…。
『竜』を見えない一般の人々にとって、二匹の竜の激闘を物語るものは、それだけでした。
荒ぶる『雷竜』の仕業です。街の灯火は消え失せていました。
全開の雷竜が放つ力は、辺り一帯の変圧器という変圧器を過電圧状態にせしめ、いよいよ機能不全に陥らせていたのです。
変圧機が壊れれ、送電が行われなければ、“灯火”とは名ばかりの電気文明の照明は失われ、もちろん街は闇に包まれるのです。
けれど、9課の下準備も万端でした。
国連のEPD対策委員会に前もって連絡し、万一の場合に人々の避難を誘導し、竜の存在をもみ消す、“修繕課”100名を待機させていたのです。
美奈子が竜一を呼び出すにあたり、“修繕課”から渋谷の駅から出来るだけ離れたこの喫茶店を指定されたのも、万一のとき、人が疎らな所の方が避難誘導と秘密保持に容易であるからでした。
「さぁ、駅の方へ!」
この暗がりなのにサングラスをかけた“修繕課”の黒服連中は機敏、適確、迅速に避難を誘導していました。
…いえ、しかし、それはあまりに『準備万端』過ぎました。
「おい!あんた等誰なんだ!?」
と、誰かが怒鳴り返しました。それはそうなるでしょう。
「何が起きているの!?」
と、ビジネスウーマン風の女性が尋ねれば
「あのメール!? マジかよ!」
と、部活帰りの男子高生達が騒ぎ出しました。
「黙って走れ! 危険だ!」
“修繕課”のサングラスは怒鳴り返します。白人ですが、流暢な日本語です。
「死にたくな―――
と、彼が言おうとした次の瞬間、轟音が響きました!
振り返ると、十数メートル向こうのビルの壁に大きな穴が開き、向こう側が見える状態でした!
「What' the Hell...?」
彼は呆然。思わずサングラスを外していました。