美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ！
　　その映像の中では美奈子が“誰か”と戦っていました。
　映像には美幸さんが耳にする周囲の若者達のざわめきに混じって、
　「危ないッ！　後ろ！」
　という美幸さんの意思も一緒に送られてきました。
　
　ユイもまた、眼を細めました。
　“何者か”が、よろよろ立ち上がる美奈子を、背後から襲ったのでした！

　「やめて…！！」
　美幸さんの悲痛がユイの脳髄に冷たい水銀のように流入してきます。
　　

　その攻撃は蹴りだったのでしょうか、美奈子と『闇竜』は吹き飛ばされ、向かいの雑居ビルに突っ込みました。
　ビルは主柱を壊され、ゆっくり倒壊していきます。
　

　そんな光景に狂気に似た群集の熱狂を増します。
　美幸さんの耳を通して、その熱狂がユイの頭にも飛び込んできます。

　たとえば、そばにいる男子学生の二人はこんな会話をしていました。

　「明日、学校休めるんじゃね？」
　
　「いや、しばらくは事故後遺症とかいって、休めるっしょ？」　


　　　
――分かった。そうか…

　「え？　何？　美幸？」
　ユイは聞き返します。
　
――この無思慮が……敵…！？
　
　美幸さんは、竜一の力の根源を悟りました。そしてその思念はもちろん、ユイに流れ込みました。二人の脳は、今、シンクロ状態にあるのです。
　
　「そんな、美幸…何を言ってるの？」
　ユイは言葉を詰まらせました。


　でも確かにそうです。
　これでは女性に決闘劇をさせるサディストな変質者向けの深夜アニメのようではありませんか。

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