美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 と、そのとき。
 閉院時間を過ぎてチェーンが引かれた病院の駐車場に、飛び込んでくる車がありました。

 チェーンは弾け飛び、車は急ブレーキでユイの前に止まりました。


 「パパ!?」
 車から姿を現したのは、裕でした。


 「いいんだ、Q。…もう、いいんだ」
 裕はQの肩を叩きました。Qはゆっくり、ユイの身を解きます。
 

 「まさか……? あなた…!!」
 麻衣は悟りました。
 そうです。麻衣は裕が“決断”を下した事を察したのです。
――決断、それは

――最強の『雷竜』に、未完成の『炎竜』をぶつける――


 無謀な話です。
 相手は『雷王』ゼウスに対し、こちらは『太陽王』…。
 太陽王などと崇められようとアポロンは所詮、ゼウスの不倫相手の子供でしかないのです。
 『13GEMs』がオリンポス12神をモデルに創作された以上……
 その力の差は誰の目にも歴然としていました。
  
 
 しかし、裕は不思議と穏やかに微笑みました。
 「ユイ、気付いたんだろ?」と彼は笑いました。


 「うん…!」
 会話の間も、ユイの頭の中へは闘いの映像が半ば強制的に侵入してきていました。
――地上に突っ伏せる美奈子に迫る…“敵”。そんな映像です。


 「そうだ、ユイ。強力で凶暴な力が召還されているんだ…」
 「それは…いや、人の無思慮と悪意を吸った化け物は人そのものの化身かもしれない」
 

――美奈子は倒れつつも、敵の背後から魔物達を忍ばせましたが、その攻撃はいとも簡単に回避されてしまいます。


 「うん。よく分かんないけど、すべき事は分かる…!」

 「私にはそれに対抗する力がある…」

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