美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ！

　少女の手には指輪が握られていました。

　『雷王の指輪』。二人を巡り会わせ、無理やりに穿いていったその指輪です。
　
　「ごめん…ごめんね…」
　と、ユイは泣き続けました。

　少年がこの星に生きていた唯一の痕跡。少年の心を吸ったその指輪は、少女の小さな、しかし温かな掌に抱かれ、いま何を思うのでしょう。何をしてやれるのでしょう……。


　俯くユイの瞳には、ヒビ割れた横断歩道のモノクロームが涙をレンズにして映り込んできました。
　事も無いそれがユイの心の何に触れたのか、少女はまた、うわぁん、と大きく泣き崩れました。
　
　きっと、その繰り返す白と黒の連鎖は、ユイに宇宙の約束を連想させたのでしょう。白は有である世界で、黒は有ではない世界です。
　
　そうです、今まさに。


　少女は白の断崖に佇み、
　少年は黒の帳へ去りゆき……