美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 あれほどの力を誇った神器が、最後に成したのは、『ナカナイデ』を少女に伝えた事でした。

 ――泣かないで――

 そのわずか五文字が、主を無くしたその指輪にとっては精一杯だったのです。

 「………うん…」
 と、ユイは頷きました。

 けれどそれは、今までのどんな強力な魔法より価値のあるものだった筈です。
 ユイには分かったのです。その五文字が内在させた、語りきれぬ幾多の慈しみの心が、ユイには分かりました。

 だから、ユイは夜空を仰ぎ、
 「うん」と、もう一度、そう言いました。
 小さく力強く、“彼”に言いました。
 
 今度は少女が少年の心に触れる番だったのでしょう。
 たった五文字のそれが、拭っても拭っても乾かなかった少女の悲しい涙を、“吸い取って”いきました。

 ……たぶん、“吸い取った”のだと私は思います。
 大人達がなんと言おうと、私は“空が吸い取った”のだと思います。


 ――……… 

 「プレゼント?」と、LはQに訊き返します。

 「そう、プレゼント」
 Qは元来、ロマンスに憧れる女性ではありません。だから泣いてしまっている自分を嘲るように、そんなロジカルな事を言ったのでしょう。
 「炭素結晶よ。核融合の残りカスよ」


――??
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