美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 ………いた…

 ……さぁ…
 …世界に感情を入力しろ……

 …すれば
 …世界は竜を出力する…!!

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 ドンッ、という、柔らかな子供の体と、古いアパートの壁土が叩き合わさる鈍い音が、誰もが安らかに寝静まるべき夜の刻(とき)に響きます。

 〈ハァハァ…。てめぇ
 無視してんじゃねぇぞ!〉

 「………」
 蹴り飛ばされた子供はぐったりと横たわったままでした。三半規管が揺すられてしまったのでしょう、うまく立ち上がる事ができなかったのです。
 けれど不思議と彼には、痛みはありませんでした。
 彼はただ、明日の給食の『揚げパン』の事だけを考えていました。


 彼にとって、刻(とき)は、まるでビデオのようなものです。

 ビデオならば、どんな凶暴な映画も再生しなければ、恐怖にはなりません。

 つまり彼は、この瞬間の自分を拒絶し、抵抗することさえ拒絶し、父親に蹴り飛ばされる世界を、消滅させようとしたのです。


 …ビデオ…ビデオ…
 ビデオビデオビデオビデオ
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