美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 少年というには幼い彼の名は、達也と言いました。

 達也は転がったまま、無言で裸電球を見つめていました。

 見つめていると不思議な、
 …光ってなんだろう……?
 という思いが彼の中で沸き立ってきました。

 (光ってなんだろう…)

 一方…
 〈…てめぇも… 俺を無視すんのかよ…〉
 と、達也の父は、今度は涙を流し出していました。

 〈俺を無視すんのか…〉

 “それなり”の頭の良さと高すぎるプライドを持ったこの男は、荒んだ生活とアルコールによって、完全に気が触れてしまったのです。

 〈…てめぇ… 無視してんじゃねぇぞ!〉
 男は、一転、激昂しました。その躁鬱は確かに常軌を逸しているといえるでしょう。
 〈俺はまわりの馬鹿共より頭が良いから、早く仕事が終わって、サボってただけなんだぜ!?〉

 この男は、自身の職務怠慢で今日、“またしても”職を失ったのでした。
 
 〈それをよ! それをよ!〉
 けれど酌量の余地などを、やはり私は持ちません。持ち得ません。
 だから私は無意識にも、この男の言葉に人間としての「」を使う事を躊躇い、まるで妖怪のそれとして〈〉を与えていたのかもしれません。


 ともかく、男は続けました。
 〈俺を無視すんじゃねぇぞ!蹴ってやっから痛がれ!!〉
 と、叫んで無防備の達也の腹を、“男の” ――この人物は父親と呼ぶに値しない―― 足蹴りが襲おうとするその刹那……!


――フィーイインッ!
 と、40ワットの電球が…

 みすぼらしい薄明かりしか放射できないハズの電球が…

 見る者の脳髄を焼き払う、そんな眩い殺人的な光明を放ったのでした…!
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