美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 「銃を貸せ!」

「ハハハッ! いや、ナタで十分だ!」

「俺にやらせてみろ!」
 と、スペイン人達は予想していた“夜襲”がアステカの戦士ではなく、先ほど殺しそびれた原住民の小児であった事に凶暴な薄ら笑いを浮かべます。


――殺されちゃう…!
 と、ユイは思いました。事実、そうでありましょう。


 けれど、その子供は歩みを止めません。 ユラリ、ユラリと寄り来るのです。
 そして…

 【俺を見ろよ……】

 と、少年は言いました。
 いえむしろ、そのように“少年の口”が動いたのです。


 ユイは息を呑みました。

――誰!?


 悄然とするユイやスペイン人達に、
 【違う。 違う、子供じゃあない】
 と、“少年の口”を借りた誰が言ったのでした。
 【形ある闇だ。“形ある闇”を視るんだ……!】



 「何だよ… 気味がワリィぜ…!」スペイン人達は不気味な声に血気を失います。

 「早く殺っちまえよ!」

 「そうだ銃でいい!」
 四、五丁の銃口が一斉にその子供へと向けられました。
 繰り返しますが、一人の小児に対してです。まだ世界の端が平らだった時代とはいっても、何をそう恐れるのか……
 超然を駆逐した現代を生きる我々なら、そう思うでしょう。
 
 けれど、正しかったのは…彼らでした。
 
 
 ……それは『超然』といえるものだったのです。

 それ、つまり“形ある闇”というのは……!!
 
 
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