美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ！

　まず初めに、ある一人のスペイン人が、その超然に気付いたのでした。　

　彼は目を疑いました。なぜなら、それは、自然界では許されない現象だったからです……！

　「か、“影が出来てる”…！」
　そのスペイン人青年の第一声は、それでした。
　「影ができてるぞぉーッ！」
　
　そして、意味不明のその言葉を残して彼は半狂乱で茂みへと逃げ出したのです。

　「な、何だってんだ…」と、残されたスペイン人達には動揺が広がります。


　そんな彼らに答えを与えるべく、
　【視ろ……】
　と、少年は俯いたまま、“焚き火”を指差しました。

　
　「火に……！？」
　ユイは夢である事を忘れ、呟きました。呟きながら、背中にびっしょりと汗をかいている自分に気付きました。
　「火に…！　“火に影が出来てる”…！！」
　
　ユイは気付きました。そして間もなく、少年の指の先を追って、焚き火を見たスペイン人達も、それに気付きました。

　光を放つハズの炎が、影を創っていたのです。

――炎が影をつくる…と？
――あの影は……！

　そう、誰しもが絶句してしまった奇妙な沈黙を破り、
　「偽物だぁ！！
　と、誰かが叫びました！


　その瞬間、影はたちまち大きくなり竜の形を成します！


――これは…？
　茶の瞳孔を拡大させて、ユイは慄然とていました。

　その黒き威容…。
　その身体、夜そのもの。
　
　……これこそが、『闇竜』です…！！


　【偽物だと？　違うな…。　私はその小児の“感情の出力”……】
　『闇竜』は泰然と、数十の銃口にも何ら動じません。
　【そして“形ある闇”……。　そして……】


　スペイン人は、耳は貸さずに発砲を始めます。
　「撃て！　撃て！」

　しかし！
　『闇竜』は意に介さず、続けました。
　彼は言います、
　【……そして…お前らの死だ…】
　その子供を代弁するように彼は言いました。
　
　そして『闇竜』は大きく息を吸い込むと、口から闇を噴き出したのです！


　――　と、その瞬間！！　――

　「……んッ！」
　ユイは瞼を押さえました！