美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
 …“シャイニング”……!?

 (さっきのフラッシュが…? フラッシュの原因が…?)

 ユイはジッと耳を澄ませます。

 無警戒にも2人はユイの耳に気付かず、その会話を続けてしまいました。

 
 「ジュピターでなくて…?」
 と、麻衣が言います。
 
 (ちなみに、ジュピターとはゼウス(雷王)の英語圏での呼び名です)
 
 続けて…

 「いや。盗まれた“女神の簪(かんざし)”のせいかもしれない」
 と、裕が言いました。


 
 「――!!」
 ユイはたまらずベッドを抜け出しました。そっと窓を開け、ベランダへ…。

 ベランダに立つと、まず生暖かい不吉な風が彼女を迎えました。初夏のその風を不吉と思うのか、爽やかと思うかは、多分にその人の心理状態の影響があるでしょう。
 ともかく、ユイはそれを不吉な風に感じました。
 そして高層そのそのベランダからは、“夜の闇の黒”と“月の光の白”がくっきりと人々の街を分け隔てる風景が見えます。まるで前者が夢であり、後者が現実であるように思えました。


 (ジュピター…?)
 (女神のかんざし…?)
 (二人は何か大きな秘密を私に隠してるんだ…!)
  ユイが、まるで大波に呑まれんとする羽を濡らした蝶のように、無力感と虚脱感に打ちひしがれる中、

 〔ピリリリィ!〕

 不意に、さらに追い討ちをかける事になる、その電話が鳴ったのでした…

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