美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ！

〔ピリリリィ！〕


〔ピリリリィ！〕

　その電話の容赦の無い無機質な音は、まるで、親子三人が築き上げたささやかな幸せが瓦解していく音のようでした。

　ユイは扉の前に立っています。


　受話器を取ろうと思えば、５秒もかかりません。
　『ガチャ』と扉を開け、『ガチャ』と受話器を取ればよいのですから…。

　しかしユイには、それが出来ませんでした。


　…ドクンッ、ドクンッ……
　ユイは一歩も動けません。

　何故でしょうか、その電話を取ったら、今までの生活が全て…
　そうまるで、夢みたいに消えてしまうような気がしたのです。

　
　〔ピリリリィ！〕

　…何も見ないで…
　…何も聞かないで…
　…何も気づかないで…
　そんなフリをして、ベッドに戻って寝ちゃえば…

　ママに小言を言われる退屈な毎日の朝が出迎えてくれるのかな…？

　

　〔ピリリ…　ガチャッ〕

　「――！！」


　大きな大きな音がして“運命の電話”が、裕によって取られました。

　「はい。藤間です」