美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!
「ヒト?」
少年はその真っ黒な瞳を、まるで16ポンドのボーリング玉のように重そうに動かします。
 
 しかし視線はまたすぐに雨降りの窓へと向けられました。
 飽きる事なく、雨は降っていました。


 「そうだよ、ホモサピエンスだよ」
 博士は頷きます。


 「それで? ……それで終わりか…」


 「まさか…」博士は苦笑しました。
 「『ヒト』で終わりなら、“今までのキミの日常はなんにも変わらない”……だろう?キミのその魔力は、人のモノではない。“人の次”の奴らのモノだよ。 中世、暗黒時代の文献には、こうある。 人の次段、神の螺旋階段の510兆4800段目……。 『ドラゴン』だ」


 ―『ドラゴン』―
  ―『龍』―
―『DORAGON』―


 博士は読んでいた1年前の『少年ジャンプ』を放り、少年の肩に手を置きました。
 「ここからが重要だ。よく聞け…」


 「…聞いてるさ」


 「うむ。 この世界には『感情連鎖』という理(ことわり)があってな」


 「ああ、知ってるさ…」
 少年は何かを決意するように、ゆっくりと窓を閉じました。
 窓から吹き込んでいた初夏の雨は少年の髪を濡らしていました。
 
 「それを聞きに来たんだ…」
 そう言った少年の髪は、黒を通り越して藍色に近い光沢を持っています。
< 8 / 447 >

この作品をシェア

pagetop