美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ！

「…もしもし…？」

　それが単なる裕の仕事の電話であったらどんなに良いでしょう。
――父は今、手が放せません。
――すぐにこちらからかけ直します。
　そう言って電話を切るのです。

　　そして、セーターのほつれみたいな、破滅的な日常の綻びは、単なる勘違いとして一瞬にして修繕されるのです。

　……しかし、その淡い期待はユイの想像とは全く違う形で裏切られるのでした…。

　

　「もしもし？　あの…美奈子ですが…」
　
――　えっ…女の人！？

　「えっと…あの…　ふ、藤間裕さんの番号でお間違いないでしょうか？」

　電話口に出た若い女性は思いがけないユイの声に幾分驚いたようでした。


　「はい、そうですが…」
　ユイは僅かに声のトーンを落とし、突き放すように、言いました。
　
　もちろんユイがそうしたのは、
――　不倫とかじゃないよね！？
　という安直な解答に飛びついたからです。

　ドラマの見すぎです……。

　さっきまでの不吉な予感は低次元な結末を得ましたが、多感な年頃の少女にとって、“不倫”なんてものも、まぁ、衝撃なのでしょう。