光の世界
接触
サレスの城下町はいつも通りの賑わいをみせていた。
ただ,前と少しだけ変わったのは,街の人間の話題だ。
「エナ様が帰ってきたらしいじゃないか」
「エナ様とディアス様は恋人同士だったらしいよ」
「ならついにディアス様も妃を娶られるのか」
こういったディアスとエナについての噂が,絶えず街に溢れるようになったのである。
――――――
同じように,城の中でもふたりの話題で持ちきりだった。
「毎晩のようにエナ様はディアス様のお部屋へ行かれるわ」
「まぁ。だからエナ様はあんなに…」
街と同じようにディアスとエナの話題だが,城の人間の反応は少し違った。
エナ,城に戻ってきてからというもの大半の時間をディアスと共に過ごしていた。もちろん,街の人間がディアスと自分の中をそのように噂しているのも知っていた。
そのためか,身の回りの世話をしてくれる手伝いの女中達にキツく当たる事が多かった。
それは大きな事からごく小さい事まで様々だったが,エナのわがままな態度は目に余るものだった。
そのため,城で働く手伝いの女たちはエナの事をあまりよく思っていなかった。