夏と風鈴



「いらっしゃいませ」



酒のはいってるアタシは 気分上々だ



極上の笑顔と極上のサービス




仕事を始めて3時間ほどした頃だった

手がガクガク震え出した

ヤバい

酒がきれた



トイレにすぐ駆け込む ポケットの中に忍ばせおいたウィスキーの小瓶を開け いっきに飲み干す




ここ一ヵ月 酒がきれると 手が震え出すのだ



「大丈夫?」



男も女も一緒に使える小さなトイレに 彼は入って来た
鍵を掛けずにいたアタシもバカだが 何も考えずに入ってくる 彼はもっとバカだ


彼は アタシよりよっつ上の二十三歳だ
先週入ってきたばかりで どこかヌけている



「う。」




アタシは そのまま倒れた


< 11 / 57 >

この作品をシェア

pagetop