夏と風鈴
気が付けば アタシは フカフカのベッドの上にいた
アタシのボロアパートとは正反対の どこからどこまでもキチンと手の行き届いた 綺麗なマンションだった
カチャ
ドアが開く瞬間 アタシは寝たフリをした
部屋に入って来た誰かは クローゼットの中から何かを出している
「う、うーん」
起きたフリをする
「大丈夫?」
部屋に入って来た誰かの声は あのトイレで聞いた声と同じだった
「・・・。」
「ほら、泉さんの家、みんな知らないし。店長から連れて帰ってくれないかって頼まれて…。」
アタシがなんにも言わないから 沈黙に耐え兼ねて彼は話した
「泉さんって ドコ住み?」
「・・・。」
「いずみさん?」
あ、アタシの事か
泉という名字で呼ばれるのは ホント久し振りで… 自分の名字を忘れていた