夏と風鈴
ミーン
ミーン
ミーン
うだる様な暑さの中 蝉達は 最後の力を振り絞るように力強く 鳴きわめいた
アタシ達は お互い何も話さず ただ淡々と引越しの準備をした
引越しの準備といっても アタシの荷物は服が何着かと ずっと敷きっ放しの布団だけだった
虎次郎は 何もかも捨てれば良いと 言った
それから大家さんに 挨拶をした
大家さんは あまりにも急だと 騒いだが3ヵ月分の家賃を出せばイイと言った
3ヵ月分の家賃は虎次郎が出してくれた
何もかも 虎次郎に頼ってばかりだ
「ごめん」
「謝ってばかりだな」
虎次郎は フフッと笑った