執行猶予3年



「初めまして。
松永です。
分からない事が多くて、
ご迷惑をおかけするとは思いますが、
よろしくお願いします…。」

看護師が並ぶナースステーション。
一面を残しガラス張りの開けたところ。
7階内科。
入院ベッド40床。

此処が今日から俺が働く病棟。


「はい。
皆さん。気を引き締め、
これから、
”病院の為に”頑張ってください。」

は?
って、思ったけど、
黙ることにした。
少しは、社会人としての自覚っちゅうもんは、
あるんです。


「あ。貴方でしょ!
今朝、男に間違えられたの!」

「あ、はぁ。」

「あたしも間違えたもの。」

けらけら笑いながら、
小柄な目つきのきつい看護師が近付いてきた。

「ホントに、
声低いわね。」

悪かったな。

「いくつ?」

「21です。」

「見えなーい!!」


そうなんです。
俺、松永一愛。
正真正銘の女なんです。
少し老け顔で、
よく男に間違えられます。
言葉づかいは、
男の振りでもなく、
ましてや性同一性障害でもなく、
”地”なんです。
服装も、髪形も、それなりに。

気にしないで下さい。


にしても。
この人、結構…。

「あたしの方が若く見える。」

いや、かなり失礼。
まぁ、好きになれないタイプ。



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