執行猶予3年
2月には、
夜勤独り立ちしたわけです。
1月に、
4回ほど、
椛田さんや碧さんについて、
夜勤見習いして、
独り立ち。
碧さんに、
夜勤前に再三言われた。
「僕ちゃん!!
バイトさんに負けちゃだめよ!!」
碧さんは、
俺を僕ちゃんと呼ぶ。
俺にはなんのこっちゃ分からんかった。
初夜勤日。
病棟に行ったら、
モニターが光ってた。
何を意味するのか。
「この人やばそう?」
「あぁ、今夜が山だね。」
状態がやばくなると、
だいたいモニターを取り付ける。
テレビとかで、
”ピッ、ピッ、ピッ”
とか、
音出して、
心臓の動きを線で映し出すあれ。
実際は音しないけど。
俺はハラハラ。
今日の夜勤メンツは、
お局さんがいる。
この頃俺結構苦手だった。
「あら、
今日初夜勤なんですの?
よろしくお願いしますね。」
って、
三井さんに言われたけど、
目は笑ってない。
上品なお話の仕方に、
見合わない毒舌を時々吐く。
「…よろしくお願いします。」
俺ハラハラ。
モニターの波形がおかしい。
これ絶対死ぬ。
亡くなる時って、
分かるって言うけど、
分かると言うより感じる。
俺はこの時は、
まだそれが出来なかったけれど。
こんな言い方はよくないけれど、
死相が出る。
そして、
匂いが変わる。
独特の、
今際の際に出るにおい。
人が、
朽ちていく匂い。
その人は、
夜中、
息を引き取った。