執行猶予3年
夜勤明け。
夜中に人が死んで、
明け方。
また一人、
状態が悪くなった。
9時過ぎ。
師長に申し送りをして帰ろうかって時。
その人の、
心臓の波形を映すモニターの線は、
今にも止まりそうだった。
俺は、
落ち込んだ。
後で、
椛田さんに、
「その人の運命なんだから、
落ち込んだってしゃぁんめ?」
と言われたけれど、
さすがに落ち込んだ。
最後に看護したのが、
俺じゃなかったら、
もう少し生きていたかもしれない。
家族は間にあったかもしれない。
其れはもう自己嫌悪。
看護師の仕事は、
リアルロールプレイ。
その選択が間違っていたら、
THE END。
リプレイボタンはない。
そんな世界なのだと知ってみた。
そして、
もっと残酷で、
忌々しいのは、
人の命には値段が付いていた。
其れは。
本当に付いているんだから、
仕方ない。
人は、
人の命に、
重いも軽いも、
無いというけれど、
其れはどうだろう。
おれは、
友達が死んだら悲しいけれど、
TVに映される、
見ず知らずの人間が死んだとき、
其れが俺に与える感情は皆無。
別に悲しくもない。
其れは、
俺が持つ命の値段ではなかろうか?
この職についてるものが言うのもなんだけれど、
死にゆく人の中に、
其れが、
ありありと見える仕事。
と言うより、
この病院どくどくなものである。
のちにその真相を、
上げていくけれど。
人の命は、
皆が平等ではない。
この世界には、
平等などと言うものは存在しない。
その中、
俺は、
慈愛のふりで手を伸ばす。
なぜなら俺は神ではないから。
神様は嫌いだから。
どんなに助けてと、
叫んでも何一つ助けちゃくれない。
病棟なんて無い。
神は、
人の上に人を作って、
人のさらに下に人を作る。
其れが現実なんだ。