執行猶予3年


「俺飛びたい…。」

同時期の事だった。
夜勤で洋ちゃんと、
師長室でよく話した。

そのときこんな言葉が飛び出した。


自由になりたいとかそんなニュアンスだった。

「松永はいいな。」

「おうよ。
何処にでもぶっ飛んでいけるぜ。」


「なんか、
上手くいかなくて。」


生活の事だった。
何かがすれ違い。
気持ちにずれが生じてた。
すごく複雑だった。

6月あたりだったか、
別居騒動が起きた。

俺もそこまで深刻とは思わなくて、
そうかそうかなんて聞いてたら、
想像以上に深刻で、
離れて暮らそうまで言っていたらしい。

四六時中狭い1Rの部屋に一緒に居て、
洋ちゃんが夜勤専門のバイト。
鶴が日勤ばかり。

生活もすれ違ってきた。


洋ちゃんの中にも、
やっと、
バンドが出来る。
全力でそちらに向かいたい。
やっと掴みかけた夢の一欠けら。

優しさが逆に働いた。


もうこの辺になると、
どちらが悪いわけじゃないけど、
行き詰る。
まるでそんな感じ。

俺の印象で言えば、
こんな恋人同士は珍しい。
お互い素直に思ってて、
一途だ。
お互い真面目で、
まじめすぎた。


まあ、
別居の話は、
鶴の反対により、
消え去ったとか。

それからだ。


やっぱり。
行き詰ってたのは確かで、
どうしようもない現状を打破しようと、
お互い必死になってたようだ。

その間も、
洋ちゃんはバンド活動。

鶴と俺が過ごす時間は、
馬鹿に多くなっていた。

週に五回のカラオケとか。


その代り、
減ってたんだろうな。
洋ちゃんとの時間。

逆か?
減ったから俺との時間が増えたのか?

よく分からんけどそんな感じ。

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