執行猶予3年


夏だ。
毎日暑い。
でも、この地方の暑さは、
もう2週間もすれば、
すぎてしまう。

もうすぐ夏休み。
今日はずる休み。


「八巻~!!
海行こうぜ海!!」


鍵の掛かっていない玄関を、
勢いよく開けて、
八巻をたたき起しに来た。

中に入ると、
八巻がベッドに寝てた。

「おい。
昼だぞ。
健全な若者は、
遊びの時間だ!!」

「ん~。
俺、健全じゃないから~。」


「なん?具合でも悪いの?」


少し顔色が悪いような気がした。
紫の悪趣味なカーテンのせいかなと思ったけど、
いつもなら飛び起きる八巻が、
だるそうに、
ベッドに寝転んでいた。


「夏バテ?」

「ま、そんな感じだ。」


外から、
待機してた車のクラクションが鳴る。
達治に先に行っててって、
叫んだ。

車の去る音。



「なんか飲む?
そこのコンビニで買ってくるけど。」

「いらん。
腹減ってない。」

「あそ。
なんかほしかったら言って。」

一応看護師の卵だったから、
看護しようかなって思ったけど、
何したらいいかわかんなかったから、
ほっといた。


俺は暇を持て余して、
携帯をいじったり、
八巻のわけわからない、歴史の本を読んだり。



「便所。」

日も傾いたころ、
うとうとしてた頭の上から不意に声。

別に返事もしないまま、
テーブルにもたれていた。



あ~あ。
今日は、花火しようって、
たくさん花火買ったのに。

ちょっと残念だったけど、
八巻と一緒が良かったから、
仕方ない。

このせつない乙女心わかれよお前!!
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