執行猶予3年
「おし!
海行くぞ!!」
そう、
確か、10分ぐらいだった。
便所から出てきた八巻。
だらけてた俺は時間なんか見てなかったけど、
確かそのくらいだった。
その間に、
異常に元気になった八巻。
え!?
って思ったけれど、
海行きたかったから、
考えなかった。
人間の脳って勝手なもので、
自分の都合のよいようにいつも解釈するんだなこれが.
「うん!!
早く行こうよ!」
俺は二つ返事で、
八巻のバイクにまたがり、
海に行った。
「おっそい!
花火始めてるからな!!」
「ロケットはまだだべ!?」
意気揚々と乗り込んでく八巻。
その後ろ姿に少し違和感。
痩せた?
食べてる?
最近、会う回数少なくない?
”でも、
今が楽しければいいじゃん!”
その考えが、
若さがその先を考えるのを阻んだ。
「風が強くなってきたな。」
「しゃねえよ。
はまだもん。
ロケットはあぶねえからやめるべ。」
「手持ち花火腐るほどあるから。」
俺は、
派手な花火や、
それこそロケット花火が好きだけど、
昔じいちゃんと縁側でやった、
線香花火が大好きだった。
わざと暗がりに言って、
線香花火に火をともした。
「一愛。
お前何隅っこいってんの?」
「お。
線香花火な。
でも、風強くてすぐ消えちまう。
最後まで出来んのさ。」
「こうすれば?」
八巻と二人で肩を組んで、
わざわざ風の強い中、
線香花火をやった。
ポツリポツリと、
砂上に火が消える。
一つだけ、
最後まで落ちずに、
ゆっくり手の中で消えていった。
なんてことない一つの花火。
なんて儚くて、
美しいんだろう。
「寒いな。
なんか、買ってくる。」