執行猶予3年
事件っていうのは、
その電話の何日後だろう。
とにかく、
8月4日。
蒸し暑かった記憶がある。
「なぁ。
聞いて。金井。」
「何?」
「八巻と連絡とれない。」
「何お前も?」
「金井も?」
「飲みに誘っても、
メール、シカトされてるんだよな。」
「いや、さっき電話したんだけど、
電源入ってないし。」
「原君に聞いてみる?
職種同じだし、
下手したら同じ現場かもよ?」
「あ、それいい。」
すぐ電話したら、
原君は知らないらしかった。
少しがっかりしてると、
ほどなくして、
原君から電話が来た。
『なんか、現場にも来てないみたいだけど。
職長が電話してもつながんないって。
無断欠勤して、
出てきたら、
大変だよな。』
原君は、
笑ってたけど。
俺と金井は笑えなかった。
顔を見合わせて、
最近感じていた違和感が、
大きな不安へと変ったんだから。
急いで、
車に乗って、
八巻の家に言った。
八巻の家に着いたのに、
なかなか二人して、
車から降りれなかった。
蒸し暑い車内。
蒸し暑い風。
何もかもが不快感。
何もかもが不安要素。
ほんの数分の葛藤。
やっと、車から降りて、
玄関へ向かった。