執行猶予3年
死んだ爺ちゃんは、
オカンの父ちゃんで、
血のつながらない俺を、
ばあちゃんと共に可愛がってくれた。
意地の悪い伯母と一緒に住んでいた。
オカンのお兄ちゃんの嫁なんだけど、
とにかく俺は、
ガキの頃から嫌いだった。
それでも、
家孫と変わらず可愛がってくれた爺ちゃん婆ちゃん。
お酒を飲んではだめと、
婆ちゃんに言われてた爺ちゃん。
婆ちゃんがいなくて、
俺と二人きりだった時、
一愛内緒で半分こして、
飲もうと缶チュウハイを持ってきた、
そんな爺ちゃんに笑えた。
いつかの日、
爺ちゃんは照れくさそうに、
自慢げに、
婆ちゃんとの馴れ初め話を話してた。
山間の田舎に住んでいた若かりし頃の婆ちゃん。
初めて海を見せた時には、
寄せる波にびっくりして、
怖いと言っていたそうだ。
今の婆ちゃんからでは、
想像に難い…。
そんな思い出を思い返しながら、
小雨降る空に立った、
長い煙の塔を見ていた。
あぁ、
爺ちゃんが焼けてる。
俺は、
悲しかった。
そして寂しくって、
泣けた。
一愛、一愛と、
名前を呼んでくれた。
初給料で小遣いをやったら、
日記に書くほど、
喜んでくれた。
「一愛。」
喪服を着たオカンに呼ばれた。
「なんよ?」
「あんた。
3年の約束忘れんじゃないわよ。」
「…あぁ・・・。」
3年たったら戻ってくる。
その約束で東京に出た。
俺は、約束した覚えないけど。
何れは戻るつもりだけれど、
3年は短いじゃんよ。
でも、オカンが怖くて反抗できない。
何度この人の目の前で、
舌を噛み切ってやろうかと思ったか…。
根は悪人じゃないんだけどね。
3年か。
ほんとにそう長くはないな。
腹くくろうか俺。