執行猶予3年
車いすに座ってる、
爺ちゃんが見えた。
微動だにしない。
「ほら、
ベッドに乗せるよ!」
俺は、
とりあえずベッドに乗せた。
触った感触は、
温かな柔らかい人間の感触じゃない。
死んでる?
「吉川先生呼んだから!!」
「どきな!!!」
ぁ・・・。
急変時のあのなんとも言えない緊迫感。
俺は、
一度もちゃんと、
急変の対応ができていない。
「患者は!」
間もなくして、
吉川先生は来た。
椛田さんと、
先生は患者の処置をしていく。
俺は又、
目の前で繰り広げられる光景を、
見てるしかなかった。
これ、
地味に結構落ち込むんだよね。
ため息。
結局。
その患者は亡くなった。
ご飯を食べようとして、
車いすに座って、
ご飯が運ばれてくる。
その僅かな間に、
一人。
息を引き取ったのだろう。
誰にも看取られることもなく。
家族もいない、
その患者の荷物を整理していた。
床頭台の中。
洋服、日用品を箱に詰めていた。
その奥。
出てきたのは、
古びた木箱。
大きなのと、
少し小さい箱。
裏には、
滲んだ文字で、
年月日と、
読めない名前が書いてあった。
骨壷だった。