執行猶予3年


「なんでこの席なんだ。」

会場に入れば、
円状のテーブルがずらっと並び、
席には、
各々の名前があった。
俺と洋ちゃんの席は仲良く、
壇上の真ん前。

ばーかばーか。
最悪だ。

乾杯の音頭。
もう飲むしかねえ。
酔っぱらって、
どうでもよくなってしまえ。

「松永。
飲むしかなくねえ。」

「飲むべ。」

乾杯のあずと共に、
呑みだした俺達。
ビールにワインが10本くらい、
各テーブルにあって、
俺らはそのほとんどを飲み干した。

…が、酔えない。

なぜかって?
会場の視線が痛い。
近場で聞こえるヒソヒソ話。
俺らは自分たちの看護師と書かれたネーム札を、
握りつぶした。

うちの薬剤師の江崎さんが、
不憫に思ったのか、
料理を持ってきてくれた。

「これ食べなよ。」

「すいません。」

いいとこあるじゃねえか。
禿のくせに。

「酔えねえ。」

「最悪だ。」

そんなことをしているとビンゴゲームが始まった。
新人が当たるように細工されてる。
洋ちゃんが当たったのに、
行きやしねえ。
寝た振りかますし。

「ねえ?
君、系列の人たち?」

面白がって、
系列病院の兄ちゃんがちょっかい出してきた。
命知らずめ。
俺たちは、
半端じゃなく機嫌が悪いのだ。

「あ゛?」

はい。退散。

カラオケとかはじまちゃって、
もうその場に居たくなく、
二人で連れション行ったり、
ラウンジでコーヒー飲んでたばこ吸ったり。
暇をつぶしてた。

「ほら、
理事長挨拶が始まるよ。」

と、師長に連行される。
この時ほどこの人を鬼だと思ったことはない。

理事長って。
あの噂の…。
初めて見たような気がする。
糖尿病で全盲の独裁者。



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