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悠目線
綺羅の家に入った瞬間、あの頃がフラッシュバックしてきた。
白いコンクリートの壁。
部屋だけではなく、人をも仕切る冷酷な壁。
その部屋に毎晩響く、怒号と悲鳴。
俺には有り難かった。
真っ白な壁が俺を守ってくれていたから。
夜になると部屋に閉じこもって、嵐が過ぎ去るのを待つ。
ただ一人の姉と一緒に。
いつもビクビクして、常に相手の顔色を伺う。
テストは常にトップ。
機嫌を損ねちゃいけない。
機嫌を損ねちゃいけない。
ただそればっかり考えて生きてきた。