太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
「先生、年賀状ありがとうございました。
嬉しかったです。
お返事、必ず返しますから。」


忠志は透明の円卓の前で、緑茶を入れている。

175cmの猫背の背中を丸めて緑茶をすするその姿は、まるで隠居した翁の様だった。


「そういえば笹木先生、御定年を迎えられたんですね。

すみません、私、何も御礼の一つもしませんで。」

そう私が言うと、ずっと黙っていた先生は、口を開いた。


「謝るのは、オレだべ。長い事、生徒に年賀状なんて、出してねえなあ。

いや、何しろ、教えた生徒が多すぎてなぁ。
国語の教師としては、失格だ。

悪かった。

来年は必ず出すから、許してくれ。

頼む。浅尾。

オレはなぁ。」



「なんか先生、号泣してるよ。

ミナト、あんた何言って泣かせたの?。」


電話はそう言って笑う、由宇ちゃんの声に変わっていた。


私は由宇ちゃんにもう一度先生に、私に届いた年賀状の事をその場で確認してもらった。
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