太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
私は訳がわからなくなって、どう考えていいかわからず、

そのまま座り込んでいた。


ふと忠志に目をやると、今度はテレビを付けて、何やら笑っている。


忠志とは、もう2年になる。


キッカケは、よくわからない。

初めてセックスした日からだとすれば、2年になる。


忠志がテレビを見て笑うたびに、固くて太い腕が小さく震えた。忠志と最後にセックスしたのは、いつだろう。
私はいつの頃からか、『女』になる自分を拒絶する様になってしまった。
感じる事も、触れる事も、愛撫してもらう事も、私は、もう受け入れる事ができない。私が『女』になる事は、私の『母』になる事、な気がしていた。小3の私を置きざりにしても、男を選んだ母。忠志に抱かれている私は、限りなく、もの悲しいくらい、女になってしまうから。忠志の体にピタリと張り付く、クラゲの様な私の腰も
ジワジワと体から淀む様に湧く、汗や体液も、鳴咽の様な激しい吐息も、全てが私を絶望の様に、女にして、私は、涙が止まらなくなる。忠志が私の中に入って来る度、私の奥に眠る子宮は、一瞬に冷たくなって、それでも暖かく固くなって。私の忠志と繋がっている部分は、いつまでも忠志を逃さない、悲しい檻の様になってしまうんだ。
その愛しくて、寂しい檻は、私の心さえも、そこから、いつまでも出してはくれない。母さん、にはなりたくないよ。もう、失うのは沢山だ。いつまでも女である事を捨てなかった、母の代わりに、私が、女であることを後戻りできないくらい、捨ててしまいたいんだ。
大人になる度、
母の面影を追う度、私は女である自分を、心も体も全て拒絶してしまいたい。
私は、雪の窓に目をやる。窓は、全てを受け入れる様に、大きく開いている姿より、閉じている方が、綺麗だ。閉じた窓が、私は好きだから。
「由宇ちゃんて、小学校からの友達だろ?福島の。」
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