太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
今日は雪だった。

東京にも足元に散らばるくらいは雪が積もった。

部屋の電気はつけていなかった。

机の上のスタンドの小さな明かりだけで、部屋のストーブの火は赤くて長い面倒なトンネルみたいに、青い絨毯に細い陰を落としている。

その陰はまるで晴れた日に指す傘の様で、ただ何の目的もなく静かにそこに広がっているだけだ。


日付はもう、一月三日になっている。

明日は会社に足を運ばなくてはならない。

六日の会議には、資料を間に合わせわなけば。


外にはまだ雪が降っている。

少し開いたカーテンの隙間からは、氷の破片の様な白い雪の落ちてくる姿が見え隠れしていた。


一月の暗い夜とそれを彩る様に健気に降り続く白雪は、何故こんなに私を穏やかにしてくれるんだろう。


抵抗を知らない健気な雪とそれを優しく受け入れる夜の闇は、私の忘れてしまった、あえて逃げ出していた何かに似ている気がした。


私がこの作文を見つけてしまったのは、笹木先生から今日届いた年賀状を見たからだ。


なんだかいろいろ懐かしくなって、卒業アルバムの先生の顏がどうしても見たくなった。

深夜にこんな壁の薄いアパートで、押し入れを荒らす音はどんなにか奇妙で耳障りだったろう。



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