太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
トキの身震いする程の緊張の糸は、そこはかと無く揺れる暗灯の火と共に緩やかにほどけてゆく。


「そなたの名は?」

静光尼の声が障子の向こうから流れた。


「トキ、と申します。
齢は十六にございます。」

静光尼の姿は障子の白枠に暗灯の灯りで密かに照らされ、その姿がはっきりと見える。

細く無情な程の柔らかな線が、トキの眼に映っている。

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