太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
その静光尼の声は絹に水をかけた様にサラサラと流れ込み、雪溶けのごとくトキの心を溶かした。


「尼僧様はその御姿さえも、滅多にお目にかかれぬと聞いておりました。

御言葉を交せるこの機を、御仏に感謝致します。

わたくしの拙き話を拝借して下さりませ。」


秋の満月は雲さえも寄せ付けず、トキを真上から見下ろす。


秋の淡い静寂が障子越しの2人を包む。


トキは静かに話し始めた。
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