太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
「しかし――。

寛治様はわたくしの願いを、受け入れてはくれませんでした。

わたくしの髪を優しく撫で、その腕に抱いて下さっただけでした。

『――そなたは清らかなままで嫁入りをしなければならぬ』、と。」

「わたくしの家は、薬屋。

二人して死への旅路につく事のできる劇薬もございます。

しかしそれさえも、寛治様はお断りになりました。

『あの世でもう一度巡り会えば良い。

お前も命を絶ったりしては決していけない。

そなたの命は、わたくしの命だから』と。」

トキは先程そう告げて去って行った、寛治の背中を想い出していた。

「わたくしは寛治様と二人、死に遂げる事、そして自ら命を絶つことすらできないのです。

二人で死なずして別々に死に別れ、あの世でまた出会い添い遂げられるとは、わたくしにはどうしても思えませぬ。」


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