太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
「今頃、父や母や家の者が行方をくらましたわたくしを、必死に探し回っている事でございましょう。

もう現世でも、あの世でも寛治様とわたくしは『二人』にはなれないのです。

もう寛治様に触れる事も、目に触れることすらできませぬ。

ならば――。」


その時、虫の音がリンと暗闇に響いた。


「静光尼様、わたくしのこの指を――、わたくしの一生分の心を、寛治様に――。

せめてわたくしの嘘偽りの無い永遠の心だけでも、寛治様の側に――。」

トキが懐に忍ばせた小刀の刃先は、月の滴を思わせる様に光を放つ。

トキは震える手で、それを掴んだ。

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