太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
「もうわたくしは、これ程の事しかできない憐れな女にございます。」
トキは障子の向こうの静光尼を見つめた。
「この小指、寛治様と幼き頃、必ず夫婦(めおと)になると約束し固く二人して結んだ指、でございます。
わたくしは間もなく、家の者達に引き戻されるでございましょう。
静光尼様、どうか、後生でございます。
憐れな女の心を――、寛治様にこの小指と共に、渡してはくれませぬでしょうか。」
トキはそこまで言うと、右手に掴んだ小刀を更にきつく握りしめた。
トキは障子の向こうの静光尼を見つめた。
「この小指、寛治様と幼き頃、必ず夫婦(めおと)になると約束し固く二人して結んだ指、でございます。
わたくしは間もなく、家の者達に引き戻されるでございましょう。
静光尼様、どうか、後生でございます。
憐れな女の心を――、寛治様にこの小指と共に、渡してはくれませぬでしょうか。」
トキはそこまで言うと、右手に掴んだ小刀を更にきつく握りしめた。